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指導者は『化学者』です


ある野球指導者と話をしていた時のことです。

その指導者は私にこんなことを仰いました。

「あの子は下手なんですが、彼のお父さんは昔、有名な選手だったらしいんですよ。血を引いていると思うんで、どこかで化けてくれないかなぁと思っているんですが。」

私はこの言葉にとても違和感を感じました。

指導者は選手が化けるのを待っているのではなく、

選手を「化けさせること」が役目じゃないの?

一人でも多くの選手の素質を見出し、素質が開花するように支援すること。これが指導者の役目だと思いますし、それこそが選手とグラウンドで共に汗する楽しみだと思います。「この方法なら上手くいくかも?」と指導法を変えてみたり「彼に合った打ち方はないか?」と新しい理論を学ぶのです。

同じような話で「来年の新入部員でいい選手来ないかなぁ」と言っている指導者にも同じようなことを感じます。「来なければ育てればいいじゃないか?」と。

この2つの事例に共通していることは、どちらも受動的だということです。

「選手が化ける」「いい選手が入団して来る」どちらも他力本願です。

指導者が他力本願で受動的になっていたら「積極性がない」と言ったところでその言葉に説得力なんてありませんよね?かなり高い確率で選手も消極的になると思います。

いつも申し上げている通り『選手は指導者の鏡』ですから。

自らの努力と働きかけで、誰もできなかった化学反応を起こすこと。

これこそが指導者の楽しみだと思います。

まさに「指導者は化学者」です。

もちろん化学は思わぬ事故を起こすこともあります。だからこそ基礎的な技術を学び、安全にプレーできるよう指導もしなければなりません。技術のこと、トレーニングのこと、メンテナンスのことなど幅広く学ぼうとします。

特に小学生の時の差なんて大したことないです。

埋もれていった「学童野球のスーバースター」も、逆に大学生くらいになってようやく資質が開花した選手も見てきました。

「誰も予想しない化学変化」も何度か見てきました。

個人的には他の指導者が興味を持たない選手ほど興味が湧きます。

全ての可能性を否定することなく、いつの日か「えっ、あいつがプロ野球選手!」みたいな選手を育ててみたいです。


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