打撃における「詰まる」はあまり良いイメージはないですよね。
できればバットの芯で捉えたクリーンヒットを打ちたい。
でも私は「詰まってOK」なのでは?と思っています。
なぜ「詰まってもOK」なのか?
今日はそのことについて書きたいと思います。
【『詰まる』の定義】
まず「詰まる」の定義を明確にしましょう。
左の絵はいわゆる「詰まる」です。
主に内角のボールに対して、バットの芯よりもグリップ寄りの部分で打たされてしまう状態を「詰まる」と表現されます。
ゴロもあればフライもあります。打球の方向も様々ですが、概ね下線部分のことを総称して「詰まる」と言います。
投手の投球コースを変えることはできないので、
「自らの技術的な工夫でバットとボールが当たる位置を変えること」
のみで「詰まる」を回避することができます。
大きく分けて3つの方法があります。
【①ミートポイントを前に出す】
恐らく私が知る限り、最もこの指導がされていると思います。
3つの中では一番簡単な方法です。
間違いだとは思わないのですが、小学生を指導していると以下のようなメリットとデメリットを感じます。
<メリット>
・左方向に強い打球が打てる
<デメリット>
・ほとんどの打球はファールになる
・身体を開いて打つ癖が着く
打球の左右方向はインパクトする時のバットの角度で決まります。左図のように打つと当然三塁側のファールが増えます。そしてこの打ち方は「最初から開いて構える」と最も簡単にできます。最近、オープンスタンスで構える子が増えているとお気付きの方も多いのではないかと思います。内角のボールが見やすいのです。
このタイプの打者は緩急に弱く、大学生になるとよく右投手のシュートや左投手のスライダーでバットをよく折ります。特に最近はボールを動かす投手が増えているので、ポイントを前に置く打ち方は世界的に見ても廃れつつあります。
【②ミートポイントを後ろに下げる】
ちょっと高度な打ち方ですが、グリップ主導でバットを振り出し、いわゆる「インサイド→アウト」で振る方法です。
この方法のメリット・デメリットは以下の通りです。
<メリット>
・ボールを長く見ることができる
<デメリット>
・振り遅れているように見えるので、見栄えが悪い
この打ち方だと、ほぼ100%左方向には飛びません。この打ち方でライト前ヒットを打つ癖がつくと、左方向に放った打球もヘッドが効いていないためにスライスのかかったような打球になります。しかし、この打ち方をする選手はバットとボールが衝突しないので、大学生になってもバットを折りません。
日本では井端弘和氏、MLBではデレク・ジーター氏やイチロー選手などが内角球を逆方向に打つ時、この系統の打ち方をします。
【③ミートポイントは変えずバットをズラす】
この打ち方は3つの中で一番難しいのではないでしょうか?
インパクトの瞬間に少し左肘を外側に抜くように振ってバットの芯に合わせる打ち方です。
メリットとデメリットは以下の通りです。
<メリット>
・緩急に強く、最も広角に打てる
<デメリット>
・技術的には圧倒的に難しい(小学生にはほぼ無理です)
落合博満氏や現役では坂本勇人選手などはこの打ち方をしますね。
MLBのパワーヒッターはこの打ち方で内角球を捌いている選手が多いと思います。
プロでも難しいと言われる「内角打ち」が上手い選手は、だいたいこの打ち方で打っているように思います。
高度なバットコントロールとある程度のリストの強さが求められるので、小学生にはかなり難しい打ち方だと思います。
技術的な指導もなかなか難しいと思います。
野球未経験の指導者には失礼な言い方ですが「素人が手を出せない領域」です。
【①〜③の総括】
内角球は身体に近いため、身体の小さい選手でもある程度飛距離が出ます。
しかし安易な結果を求めて①のような打ち方をすると、中学生になって相手投手がスライダーを投げてきたり、高校生になって140km/hくらいのボールを投げるなど、投手のレベルが上がるたびに「挫折」に直面するように思います。②は「インサイド→アウトで振る」という良い側面はあるものの、こればかりやっていると「右方向にしか打てない打者」になることもあります。実際にそういう打者を私は何人も見ました。
③は筋力が上がってくる中学生以降に取り組めば良いのでは?と思います。
小学生の場合
・極力『インサイド→アウト』を意識してバットを振る癖をつける
・「『真ん中』をセンター前に打つこと」ができればOK
と思います。
以上のような理由で「小学生は詰まってOK」だと思います。