最近、選手の動作指導をすることが多いのですが、その時に感じることは「コミュニケーションが上手な選手は動作の修得が早い」ということです。
例えば制球力の悪い投手を指導する時、「ワインドアップで投げるな」という指導をされる方が多くいますが、なぜワインドアップで投げてはいけないのでしょう?
これはワインドアップの動作がトップ形成の安定性を欠くことが原因で制球を乱している場合にしかセットポジションでの投球は制球向上の効果を生まず、体重移動が制限されるため球威を落とすだけになってしまいます。「●●するな」という指導法はそこでコミュニケーションが終わり。指導者が選手とのコミュニケーションを断ち切ってしまいます。例え一時的に制球が安定しても、「制球が良くなった理由」を理解していないので、やがて制球は悪化します。
そもそも、私は「動作指導」は「選手と協働による『創作活動』」だと思います。「目指すもの」「現在の課題」などを共有しながら、目標達成や課題克服が見込める動作を指導者が提案し、選手が実行する。そして実行してみた感想を聞き、「なんかいい感じです」「ちょっと腕が動きにくい」といった言葉を引きだしながら、微修正を重ねていく。そんなコミュニケーションの繰り返しによって動作は作り上げられていきます。その時の試行錯誤の経験とプロセスが、選手と指導者の知識となって蓄積されていきます。
動作指導が下手な指導者はコミュニケーションが上手ではありません。なぜなら選手の感覚を大事にしないからです。選手の感覚を無視して自分の型を一方的に押し付けるのは、指導者として技量が低いと思います。
同様のことが選手にも言えると思います。
自分の感覚をより具体的な言葉で指導者に伝達できるコミュニケーション力が指導者の適切な判断を引き出します。
フィット感や違和感をより具体的な言葉で表現する能力を磨くこと。そのためにはご家庭でもできるだけ抽象的な言葉を使わず、具体的な言葉を使って会話する習慣を身に付けることが野球においても指導者と良好なコミュニケーションを形成します。