投手の能力を表現する「球持ちが良い」という言葉があります。
リリースまでボールを持つ時間を長くすることで、より打者寄りの位置でボールをリリースすることはボールの推進力を打者寄りに保つ効果があります。
どのあたりまでボールを持ち続けることが理想なのでしょう?
アメリカには「球持ちの長さ」を表す”Extension(エクステンション)”という指標があります。投手板からリリースポイントまでの距離で計測されます。日本ではExtensionを計測した資料がないので定かではありませんが、MLBの平均値は188cmだそうです。日本人は体格が小さいですが重心を下げて投げる投手が多いのでさほど大きな差はないのでは?と思います。
写真の千賀投手(ソフトバンクホークス)はExtensionが長い投手だと思います。
彼の「お化けフォーク」は長いExtensionによって打者寄りの位置から落ちることで大きな効果を発揮しています。
ではExtensionが短いとダメな投手か?というとそうでもありません。
MLBで活躍する上原浩治投手のExtensionは169cmですが大活躍をしています。
「結局球持ちってなんなのよ?」
となりますよね?
私は「ボールのリリース」には理想的なポイントがあると思います。
そしてそれはExtentionの長短に関係なく共通のポイントです。
千賀投手と上原投手のリリースポイントを比較してみました。違いは軸足の位置ですね。千賀投手は打者方向に大きく体重移動を行って、かなりプレートから離れた位置でリリースをしています。上体もかなり倒し込んでいて、この2つの要素でExtensionを伸ばしていることが分かります。
一方、上原投手はステップ幅が短く、軸足もプレートからあまり離れていませんし、上体の倒し込みも千賀投手ほどではありませんね。
2人の投手に共通点もあります。
それは「左足つま先の上でボールをリリースしていること」です。
球速を上げるためには一番力が出るポイントでリリースすることが必要です。投手は左足を踏み出すと重心は左足に集まります。この左足つま先の上あたりでボールをリリースするのが一番力が入りやすいため、2人の投手はExtensionの長さに関係なく「左足つま先の上」でリリースします。
実はこれは投手に限らず野手も同じです。
「踏み出した足のつま先あたりでボールをリリースする」はスローイングの最も基本的な事項と言っても過言ではありません。
私が考える「球持ち」はポジションや投げ方に関係なく、
「踏み出した足のつま先の上でリリースすること」だと思います。
リリースポイントの矯正はかなり時間のかかる指導です。
試合から遠いこの時期に取り組むのも良いと思います。