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『向学心と謙虚さ』が指導者のエネルギー

プロ野球の投手を見ていてもお分かりになると思いますが、「似たタイプ」は居ても全く同じという投手は居ません。それはそれぞれの投手に個性があり、その個性を活かしてこそ厳しい勝負の世界で生き残れるからだと思います。
投手を指導のために注視していると、本当にいろんな特徴があります。
「体格」「筋力」だけでなく、「肩関節の柔軟性」「股関節の可動域」「骨盤の傾き」など選手の身体的特徴は千差万別です。
たとえ指導者の「理想」とするフォームがあったとしても、そのフォームが身体的特徴に適合しない選手も居ます。それを「この選手は素質がない」と切り捨ててしまう指導者もいます。でも私は「自分の理論に固執し、自論に適合しない選手を活かそうとしないのは、指導者としての資質に問題があるのでは?」と思います。自分の理論に適合しない選手が居れば「この選手に合う理論はないか?」と勉強して指導に活かす向学心がなければ、その指導者が良い投手を育成する確率は「自分の理論に合致した身体的特性を持った選手が来るかどうか?」に依存してしまうため、当然ながら良い投手を育成する確率は下がります。
どうすれば選手の特徴を的確に把握できるでしょうか?
私は「自らの技術知見に対する謙虚さ」を持つことが重要だと思います。
「自分の理論なんてまだまだ未熟。もっと良い理論があるはず」という謙虚さを持って指導にあたること。もし自分の理論に適合しない選手が居たとしても、「きっとこの選手を活かせる、自分が知らない理論があるはず」という仮説を持って指導にあたることが欠かせないと思います。
指導にあたった選手の成果が出なかった時「もっと良い方法はなかったのか?」という後悔の念にいつも苛まれます。その後悔の念があるからこそ、学習を継続し、他の指導者と交流を持ちながら新たな理論を学ぶエネルギーになります。このエネルギーがなければ指導者を続けることは難しいです。
現役を引退して25年。臨時コーチ時代も含めて20年近く指導者をやって居ますが、200人近くの投手と出会い、その度に悩み、勉強することで私自身も成長してきました。今でも選手と向き合う中で学びはたくさんあります。最近は今まで見たことないタイプの投手に出会うとワクワクします。
良い選手を確率高く育成するためには、身体的特性の異なる選手と対峙するスキルが必要です。そのためには技術理論に対する引き出しを増やし、選手の見立てについても既成概念にとらわれない柔軟性が必要です。
『向学心と謙虚さ』
私が選手と向き合う時のエネルギーの源泉になっています。