前回の投稿で「マニアが競技を衰退させる」と言った主旨のことを書きましたが、今回はある意味でマニアな投稿です。すみません。
「フライを上げるな」
「転がせ」
「ジャストミートしろ!」
グラウンドでは指導者からいろんな声が飛びます。
その言葉を聞くと「(指導者は)選手に何を要求しているかわかっているのだろうか?」と疑問に思う時があります。
30年以上野球に携わっていますが、バッティングって難しいです。今回は何がどう難しいのかを「用具の構造」の観点から検証したいと思います。
この絵はバットとボールについて描いたものです。左の灰色の丸はバットの断面図だと思ってください。
ボールもバットも丸いので、インパクトの時にボールとバットは「点」で接触します。そしてその点はとても狭い範囲だということを理解して頂きたいと思い、この絵を描きました。
よく「ボールの下を叩く」という表現がされますが、言い換えれば「バットの上で叩く」とも言えます。
元プロ野球選手の広澤克実氏がテレビで言ってしましたが、最も打球が飛ぶのはバットの中心から7mm上でボールを捉え、25°の角度で打球が飛ぶと最も飛距離が出るのだそうです。
つまり上の図から考察すると「ライナー〜ホームラン」といった理想的な打球を打つためにはたったの7mmの幅しか許されない訳です。
別の角度から検証しましょう。
「バットの芯」はどれくらいの範囲を指すのかという話です。
この図は三津和タイガー様のホームページ(※)からの引用ですが、アリゾナ大学の研究レポートによると
金属バットの芯は約5-6cmです。
木製バットになると更に狭く、ほぼ一点しかありません。
軟式球の場合は芯に当たらなくてもある程度ボール自体の反発で飛びますが、硬式球の場合は芯を外せば極端に飛距離が落ちます。非常に狭いですよね。
このことから「クリーンヒット」と凡打は紙一重と言えます。
そして「フライ」の方が「転がせ!」を賞賛している指導者が望む「ゴロ」よりもクリーンヒットに近いということです。
選手がフライを上げた時、応援席からは「あ〜」という声、ベンチに帰ったら「なんで上げるんだよ〜」という指導者からの叱責って理不尽だと思いませんか?
「惜しかったな。もうちょっと下で打てばクリーンヒットだよ」
で良いのではないでしょうか?
そもそも凄く難しいことに挑戦してるんですから。
※引用「バットの科学」(三津和タイガー様)