「今日、内角の方がボール来てるで」 試合中にベンチ内で捕手から投手に対してかけられる声。投手にとってはとても貴重な情報です。いつもボールを受けてくれていて、試合中も比較的近くで、しかも相手打者と同じ角度から得られる情報はベンチにいる指導者にも気づかないような情報を察知していることもよくあります。
有能な捕手は優れた情報収集能力を有しています。そしてそれは素質だけで形成されるものではありません。情報収集のトレーニングを積み、指導者はそのトレーニングを補助する必要があると思います。
いろんな方法がありますが、私はプルペンを活用します。具体的には捕手の後ろに座って、投球練習の間、捕手を「質問攻め」にします。小学生であれば「今の球、ストライク?」「今のボール、ちょっと動かなかった?」といった簡単な質問、中学生であれば「今のスライダーは抜けちゃったけど、何でだと思う?」というように、年齢や経験度に応じて質問のレベル感を変えていきます。
捕手は他の野手と反対向いて座っているので、捕手にしか見えない情報がたくさんあります。だから一点に集中させず、いろんなところに目配りをする習慣を付けるために様々な質問を投げかけるようにしています。ある程度自分で情報収集する癖ができてくれば質問はせず、後ろで「今のボールは指によくかかってたな」とひとり言を言っていれば、捕手は自分で「答え合わせ」をするようになります。
すぐには上手くできないと思います。何度も繰り返すことで、「さっきと違う」「いつもと違う」といった違和感を察知するようになります。小学生の頃は「(収集した情報が)正しいか間違っているか?」よりも「ひとつでも多くのことに気づくこと」が重要だと思います。良い捕手はグラウンドにボールが落ちていてもすぐに気づきます。「ボールが落ちている」という普段と違う風景に気付く感度が高いんだと思います。
こんな捕手が居ると、指導者はプルペンに付きっきりにならなくても、捕手が自分の分身として「投球練習の質」を向上させてくれると思います。