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選手ファーストは「高度な概念」です

野球界では少子化等の要因による競技人口の減少が顕著で、業界内でもそのことに対して警笛を鳴らす方も少なからずいます。私もそう思います。しかし、この「選手ファースト」というのはチーム運営上とても難しい思想で、中途半端な「選手ファースト」が更に問題を引き起こしているように感じています。


「選手ファースト」はとても素晴らしい概念だと思います。しかし実現することはとても高度なチーム運営を求められると思います。ここを安易に考えていると選手とのミスマッチが発生すると感じています。


<チームを選ぶ側の心理>


子どもが野球チームを選ぶ時、大きく分けて3つのパターンが発生する可能性があると思います。


①選手本人の「目指す姿」がチームの要求水準を程よく超えている

上記の「選手A」は自身の目指す姿がチームが要求する水準を程よく超えている場合です。重要なのは「程よく」です。言い換えればチームとして「こんな選手に育って欲しい」といった育成方針が選手の「なりたい姿」に近しいケースです。チームのコンセプトが明確かつ育成のスキルがある程度具体的でなければならないため、選手側から見た時に一番わかりやすいのは「過去の実績」です。


チームの選手に対する要求水準が低すぎる場合、選手は「このチームはレベルが低い」という判断に至ります。


②選手本人の「目指す姿」がチームの要求水準に届いていない

上記「選手B」のパターンです。例をあげると「厳しい練習を通じて努力を通じて技術を修得する楽しさを学んで欲しい」というコンセプトを掲げたチームに「好きなことだけを楽しくやりたい」と思う選手が入団したようなケースです。厳しい練習が続くと「何か違う」という違和感が強くなり、練習をサボったり、試合には出られないまま惰性で野球を続けたり、最も残念なケースはチームを去る場合もあります。


③選手本人の「目指す姿」自体が不明確

上記「選手C」のパターンです。個人的には一番多いパターンだと思います。なんとなく野球を始めて、明確な目標もない、もしくは目標自体が抽象的なままこなしているような場合です。活動を続けていく中で目標が具体化していくパターンでもあります。


実際には上記①〜③以外に「チームコンセプトが不明確、もしくは実態に即していない」という場合もあって、誤解によって選手とのミスマッチに発展するケースもあります。



<選手ファーストを実現する「3つの形」>


③のパターンが一番出現率が高いと考えた時、「選手ファースト」を実現し、入団した選手が野球を辞めることなく最後まで活動を続けてくれるには3つの方法しかないように思います。


[1]チームコンセプトを明確にし、コンセプトに合わない選手は受け入れないチーム

「後の不幸に繋がりそうな選手は最初から受け入れない」という姿勢によって選手ファーストを実現しようとする手法です。高校野球の強豪校の場合、「学校側から声をかけた選手以外は受け入れない」という学校も少なくありません。ある意味「コンセプトに合わない選手は受け入れない」を体現する一つの方法だと思います。または選手自身が「自分ではここは無理」という自制が働くことによってミスマッチが回避される場合もあります。指導者側としては一番簡単ですが、実績のないチームは慢性的な選手不足に陥る可能性があります。


[2]チームコンセプトに適合した選手に育成していくチーム

「選手C」のパターンが多いことを踏まえ、目標設定の段階から指導者が介入して、チームコンセプトに適合した目標設定を行って育成していく手法です。これは指導者側に高い知識やスキルが要求されます。選手の技術やメンタルに対する見極め、実現可能な目標を提示し選手と合意形成を図るスキルなどが求められます。企業の管理職でもここまでできる管理職はそれほど多くないように思います。それでも「選手B」のようなケースは最終的には離脱してしまうケースが多いように思います。


[3]チームコンセプトに幅を持たせ、様々な目標を持った選手が同居できるチーム

「一流選手を目指したい」という選手と「そこそこに野球やりたい」という選手が同居できるチームです。多様性のある素晴らしいチームですが、これは最もチーム運営が難しいコンセプトです。「勝ちたい」「全員が試合に出場できる」の両立、「もの凄い努力している選手」「そこそこにやっている選手」に対して均等に機会を与えるなど、基準自体が複雑になり、そのことがチーム内で不満に発展することもあります。多様な選手を受け入れる指導者側のスキルと同時に、「多様性の実現のためには時には我が子が犠牲になることもある」という保護者の理解も必要になります。


「選手ファースト」を掲げるチームも増えました。

しかし「チームを運営する側」「チームを選ぶ側」双方がどんな「選手ファースト」を実現しようとしているのか、そしてその行動は伴っているのか?レビューする場面が必要だと思います。

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